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第158回 脱原発の課題(発電方式比較)

2012年8月13日(月)

脱原発の課題

1.発電方式で安全性は必須で確保されなければならない
 原発の安全性は今問われているが、化石燃料は安全化というと疑問が残る
(1)石油の備蓄のリスク
 東日本大震災時、石油タンクの火災を見られた方も多いと思われるが、
石油タンクから漏れ出した油が自然発火的に燃え出し周辺の民家に類焼する。
 エネルギーの安全性に絶対安全はかなり難しい事なのかもしれない。
 石油タンクの倒壊延焼による被害は相当あると思われるが把握できていない。
(2)LNG保存のリスク
 天然ガスの保存にはマイナス162度で液化しLNGタンクに保存されるが、
これが気化するときマイナス116度までは空気よりも重たく、
地上に滞留しそこに人が居ると窒息する事になる。
これが燃えると言うまでも無く危険である。
また、マイナス162度に維持する事は、それなりに冷却エネルギーを使う事になり、エネルギー損失上も長期保管は避けたい。
LNG備蓄は使用量の増減のバッファー的役割と考えるのが妥当かと思われる。

2.エネルギー安全保障及び燃料安定供給
(1)少ない備蓄量で燃料が底をつく大きなリスクを背負う化石燃料
LNGは低温保存をしなければならないので備蓄日数には限界がある。
(2)何時でも買える訳ではない化石(輸入)燃料
 化石燃料は長期契約で安定的に供給が原則で安価、スポットで購入すると割高になる。
(3)戦略的に使われる化石(輸入)燃料
 ロシアは欧州にパイプラインを通して原油を輸出しているが、輸出関税をかけ、化石燃料輸出を戦略的に利用している。
極東で産出される化石燃料も価格的に戦略的に利用されると割高な支出となる可能性も高い。
(4)安全保障上輸入燃料はリスク大
 人類は資源獲得戦争を繰り返してきたことを忘れてはならない。
 リビアの政変、中東紛争を見てみると、核戦略及び宗教的色彩が強いように見えるが、裏には資源獲得紛争でもある。
少なくとも、紛争により結果的に資源の利権が奪われる可能性が常にある。常にリスクがあることを認識するべきである。
 さらに、フォルムズ海峡封鎖など実施されると、LNG供給が止まり、備蓄が無くなると直ちに電力供給がストップする。
 こう言ったリスクを考えると原子力を含めた、電力のベストミックスを構築しておかなければ、資源備蓄無しへの猶予は20日が最大である可能性が高い。
 結論として発電エネルギーの輸入化石燃料依存は、戦略的に燃料輸送を止められれば即ギブアップである。
 資源を持たない、核を持たない、軍事力強化を限定され、少子化により経済力が衰退する可能性が見込まれる日本、輸入化石燃料依存は選択肢に入れてはならない。

3.燃料備蓄日数
 エネルギーは必要なときに供給されなければならない。
 エネルギーを備蓄し必要なときに供給できるかは、常に優先的に考えておかなければならない。
 究極的には国産燃料で生産拠点から必要な分だけ安定的に供給できれば言う事はない。

4.発電コスト
 発電コストには燃料代、設備費用などがある。
 輸入化石燃料に年間約5兆円(消費税2%相当)が輸出に支出されることは極力避け、5兆円を国内経済循環に回せれば経済的効果は計り知れない。

5.発電規模
一つの施設で安定的に大量に発電できることは安定して電力供給源となる。

6.安定度(基幹発電)
 安定して発電できないで他の発電のバックアップを必要とする場合、それなりの電力供給保障を他の発電方式で準備しバックアップしなければならない。
 安定して大電力を発電できる事は基幹発電候補としての位置づけとなる。
 原子力発電を縮小するとすれば、他の基幹発電を構築しなければならない。その候補としては地熱発電、メタンハイドレートを燃料路下発電で輸入化石燃料は緊急時バックアップ用にしかならない。

7.脱原発の課題(評価表)

1 2 3 4 5 6 7 8 筆者評価
種別 資源 安全性 安全保障

燃料安定供給
備蓄度 発電コスト

経済的影響
発電規模 安定度

基幹発電
CO2排出影響 立地・環境 優位性評価

満点70
基幹発電候補 発電単価
(1kW時)円
備蓄期間
(日
備考(利点・欠点)
1 原子力 原子力 6 8 10 10 10 10 5 1 60 8 400 安全性向上の必要アリ
2 輸入化石燃料 石油 8 6 8 5 10 7 0 3 47 20 80 輸入資源、価格、安全保障上問題あり(供給できない場合有り)
3 LNG 8 6 4 6 10 7 0 3 44 10 20
4 石炭 8 6 6 10 10 8 0 3 51 8 40
5 再生エネルギ
風力 10 10 6 4 5 5 5 3 48 天候による 設備費用、設置費用が高い、買取20kW以上の風力23.1円×20年、20kW未満57.75円×20年
6 水力 10 10 6 6 8 7 5 2 54 25.2 雨量による 買取:1000kW以上の中小水力25.2円×20年
7 太陽光 10 10 6 2 2 2 5 4 41 42 天候による 自然環境による発電量不安定さがある
買取;メガソーラー42円×20年
8 太陽熱 10 10 6 4 3 4 5 3 45 天候による
9 波力 10 10 6 4 3 4 5 0 42 月齢、天候による
10 バイオマス 10 10 10 8 6 6 5 7 62 8
11 地熱 10 10 10 10 6 10 5 3 64 8 枯渇

日本各地で適地があり、発電所を建設じ、立地しやすい法整備が必要
12 核融合発電 核融合炉 8 10 10 4 10 10 5 3 60 研究段階
13 国産化石燃料 メタンハイドレート 10 10 8 10 10 10 3 3 64 資源残

必要

100年分国内埋蔵、使用済み炭酸ガスの固化埋蔵し再利用資源として開発中

(1)評価数字 筆者調査による評価である
  1~6;は重要なので良を10点満点、7.8を良を5とした。
  横№  1~6 値=10:良、0:不良
  横№  7、8 値=5:良、0:不良

(2)基幹発電 ○:基幹発電候補、△:緊急時バックアップ発電


8.総論
 「木を見て森を見ず」人は目先の出来事を重要視し将来の展開を、描けない事がよくある。
脱原発と言う掛け声はよく聞こえるが、実際の原発に代わる発電はあるのか考えていく必要がる。
先ずは森を見て木を一本一本見ていか無ければならない。
今、原子力発電以外に基幹発電を担える発電は皆無である。これを無理に化石燃料に置き換えると、別のリスクが浮かび上がってくる。
日本で有望な、地熱発電の開発、安全強化した新規開発を含めた原子力発電等を検討していく必要がある。
新規基幹発電を構築しつつ、現況の原子力発電の役割を低下させる方法を取るべきである。
新規基幹発電の構築が出来なければ現状の原子力発電を安全性を確保しつつ容認していかなければならない。
将来的な原子力発電のシェアーは新規基幹発電の開発状況に掛かっている。
☆♪――――――♪
編集後記

 最近のマスコミにおける報道 「木を見て森を見ず」と言った報道が多く、本質的な重要性を評価した報道が少ないのは残念である。
例えば10の重要な要素がある事柄で、分かりやすい1から3の要素だけで評価し、報道し、満足している報道も多い。
 10の重要な要素があるなら、全て考察し評価するよう努力し、分からないところは、見せないのではなく不明として評価する必要がある。
 原子力発電の評価は、安全重視は必要だが、それだけで他の評価は置き去りの報道が多い。

☆♪――――――♪
今日の外来語言い換え辞典 (国立国語研究所外来語言い換え提案引用)
リードタイム<事前所要時間> 全体 ★☆☆☆ 60歳以上 ★☆☆☆
意味
 企画から生産開始まで,発注から納品までといった,事業の本格的展開の前に要する時間
使用例
 開発から製造までのリードタイム【事前所要時間】を短縮することは,製造業にとって極めて重要な課題である
その他の言い換え
<調達期間・製造期間・開発期間>


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作成2012.08.11
更新2012.08.19
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